トップハムハット卿をご存じですか。
「きかんしゃトーマス」に登場する鉄道会社の局長です。
子供の頃は、トップハムハット卿の、「卿」って一体なんだ?
と思っていましたが、
大人になると、何となく理解できるようになってくるものです。
「きかんしゃトーマス」はイギリスの作品。
階級社会の名残が今なお残るイギリス(※1)では「侯爵」「男爵」「伯爵」というような称号や敬称が使われますが、「卿」もこの一種。
英語にすると「Sir」や「Lord」に当たる言葉で、
トップハムハット卿も英語だと「Sir Topham Hatt」です。
かっこいいですね、「○○卿」という響きって。
かくいう私も、以前はある称号(もちろん自称です)を持っていたんです。
その名も、
「 タイトフィット卿 」
はて。なんぞや。
革靴が好きな人たちの中ではあるあるネタですが、
「履いていれば革は伸びるし、底も沈み込むよね。」という安直な理由で、
ついついタイトなサイズを選択/購入してしまいがち。
それも狂ったように。
それが、タイトフィット卿(狂)です。
字面では「卿」としていますが、事実は「狂」。
おそろしや。
今回は、
タイトフィット卿(狂)だった かつての私が、
フィッティングの失敗を繰り返しながらも どうしても履きたかった靴。
パラブーツのウィリアムを紹介します。
パラブーツのウィリアム
My favoriteなパラブーツのウィリアム。
ダブルモンクシューズの定番にして、パラブーツを代表するモデルのひとつでもあります。
「モンクの意味は修道士」だとか、「名前の由来は英国ウィンザー公爵」だとか、
語るべきことが色々とある靴なのですが、
そのあたりのうんちく(「うんち君」ではない。)はググればいくらでも出てくるので今回は割愛します。
この靴は、フィッティングが少しばかり難しい靴です(後述します)が、
どうにかして履きこなしたくなる 魅力のある靴です。
ウィリアムの何が素晴らしいかと問われると、やはり特徴的な2本のベルト(ストラップ)でしょう。
紐靴のような正統派ではない この少々アウトローな雰囲気たるや、うんちゃらかんちゃら。
この特徴的なベルトと靴全体とのフォルムバランス、
無骨だが上品に映えるラバーソールとのバランス。
総合的にとてもバランスが取れているデザインに思えます。
しかしながら、「特徴」とは常に 利点と欠点とを併せ持つ、表裏一体の関係性。
特徴的なベルトで留める仕様の靴がゆえに、フィッティングが少し難しいことも これまた確かなことです。
サイズで苦労をした遍歴
どんな靴でも適正サイズをチョイスするのは難しいものです。特に革靴は。
パラブーツのウィリアムも多分に漏れず、フィッテイングが少々難しいモデルかなと思います。
甲を固定する部分が、紐ではなくベルトなのが 難しさのポイント。
紐靴と比べると モンクストラップの靴はどうしてもホールド感がないため、フィッテイングの重点をどこに見出すのかが難しいです。
足長に合わせてフィッティングをすると甲部分がきつくなり、ベルトを2本きちんと留められない場合もあります(=私がコレでした)。
私はサイズのチョイスに苦しみながら、実に4つのサイズのウィリアムを履いてきました(=バカ)。
良い経験になったなと自分を正当化する一方、
無駄な買い物をしてお金や時間を浪費していたことも事実です。
ウィリアムのサイズ選びに悩む人の一助になればと思い、以下に購入サイズの遍歴をまとめました。
興味ない人は すっ飛ばしてください。
■サイズ6(24.5cm相当)
ギシギシにキツキツです。履きおろした初日からかかとが痛い。ばんそうこう必須のパターン。
ベルトも2本目はかなり無理をしなければ留められません。
底が沈めば足に馴染むだろうと信じて(※2)履き続けましたが断念。履き続けることで最終的にはハーフサイズぐらいサイズアップしましたが、いずれにせよ無理です、きついです。
■サイズ6.5(25cm相当)
少しゆとりは出たように感じましたが違います。幻想でした。
■サイズ7.0(25.5cm相当)
ついにサイズが「6」台から「7」台になりました。
12月31日に叶わなかった夢が、年をまたいだ1月1日になるとなぜだか叶うような錯覚になりますが、この靴に関しても同じように錯覚でした。
とてもおしいけれど、まだきつい。具体的には甲のベルト部分です。足長は問題ありません。
■サイズ7.5(26cm相当)
ようやくこのサイズで落ち着きました。
なんなら、足長のフィッティングは少し大きいです。ですが、ベルトが2本とも綺麗に留められるようになったことによって、靴全体を甲でしっかりと支えてくれるので歩行中もストレスフリーです。
このように、サイズ「6」「6.5」「7」「7.5」と、実に4サイズを渡り歩いてきました(=バカ)。
同じ靴をサイズ違いで4回も買う行為は、自分でも何をやっているのか困惑する愚行です。
太って足のサイズそのものが大きくなったこともサイズを買い替えてきた要因ではありますが、
やみくもにタイトなサイズのモノを買い求めていた愚行には反省が必要です。
「卿」「狂」「教」
思えば。
タイトフィット卿だったかつての私は、思考停止状態のまま タイトなサイズの靴を購入していました。
深く考えずに…。浅はかに…。
無意識のうちに、このような行動を取っているのです。
これぞ、「狂」。
「狂」と書いていて、はっとしました。
「宗教」です。
狂ったように何かを信じすぎることは、怪しげな宗教を信じることに似ています。
つまり、「狂」は宗教の「教」。
(=ただのダジャレですよ)
私も今では お金がなくなってかかとが痛くなるだけの「タイトフィット教」という宗教から棄教し、「タイトフィット卿(狂)」という称号も手放しました。
自由に物事を想像し、自分で考えて行動をすることは大切なことです。
もっぱら、近年はインターネットの普及によって、ひと昔前よりも多量の情報を簡単に入手できる便利な時代になりました。
一方で、ゴミのような無利益な情報も膨大な量が発信されています。
個人的には、それらのゴミ情報はスルーすればいいだけなので別に気になりません。
問題は、「もっともらしいことを発信しているが、実際にはゴミ情報だった」というパターンです。
そして、その情報に踊らされ、入信し、狂い、卿の域にまで達してしまう。
これは非常に危険。
情報の取捨選択の重要性が問われる時代に我々は生きているのです。
やはり、物事は自己体験をして、初めて自分の血となり肉となるもの。
「百聞は一見に如かず」とはよく言ったものです。さすがは先人のお言葉。
ウィリアムの話(リプライズ)
またも やらかしてしまいました。
私物を紹介していたのに、話が大きく逸脱。
というわけで最後に 気持ち程度にパラブーツ ウィリアムの詳細を追記しておきます。
ベルトが特徴の靴なので、やはりベルトばかりを取り上げてしまいます。
それだけ魅力があるということ。
バックルとブランドタグのカラーリングも相性良く合わせられています。
まとめ
私が本稿で書いてきた理屈からすると、
トップハムハット卿も怪しげな宗教に狂っているという理屈になりますが、
彼はきっと(ただの)人徳のあるお金持ちの局長でしょう。
「卿」を怒らせると怖いので、深入りしたコメントは言うまい。
ダブルモンクシューズの雄、ウィリアムに関してまとめるなら、
・紐靴とは違うデザインの面白さ。
・ベルトストラップが2個なので無骨さがあるように見えますが、上品にバランシングされたデザイン。
・オフィスカジュアルにも休日の完全私服な日にも使える守備範囲の広さ。
このあたりが魅力の理由です。
おしまい。
お疲れさまでした。
注釈
(※1)階級社会の名残が今なお残るイギリス
例に挙げると分かりやすいのが英国だったというだけで、現実的にはどこの国においても、制度化されている/されていないに関わらず社会階級は存在します。
(※2)底が沈むだろうと信じて
革靴なので履いているうちに中底が沈み込んでフィッテイングも少しゆるくなるだろう。と思っていましたが、パラブーツの底は沈みません。信じてもどうにもならないこともこの世の中にはあるんです。
スペック
- ブランド:Paraboot(パラブーツ)
- モデル名:WILLIAM(ウィリアム)
- 型番 :981412
- アッパー:リスレザー
- ソール :MARCHEⅡSOLE(ゴム底)
- 製法 :ノルウェイジャン製法
- 原産国 :フランス
- 価格 :68,000JPY(plus tax)